ピョンチャン・パラリンピック報告 3

カンニング竹山さんの指摘を読んで思ったこと。

https://dot.asahi.com/dot/2018032000082.html?page=1

 

「とても魅力的」とメディアに感じてもらえるようなコンテンツに、パラスポーツはもっともっとならないといけないとは思います。ただ、メディアに取り上げられることで広く魅力が伝わるわけで、鶏が先か卵が先かの話になると思うんです。

 

現場にいると、日本からの取材者の数に圧倒されます。新聞社、通信社、フリー記者やカメラマン、そしてテレビ関係者など、地元韓国をはるかにしのぐ人数がピョンチャンにやって来ていました。聞いた話では、ピョンチャン・パラリンピック取材および放送関係者の半数は日本のメディアだったとか。その様子を見た海外の人は、「日本ではよほどパラリンピックの人気が高いんだな」と感じたのではないでしょうか。実際、今大会ではNHKがこれまで以上に放送に力を入れたほか、新聞各社の報道量もかなりのものがあったと思います。

 

にもかかわらず、竹山さんのように「テレビでやっていない」「報道が少ない」と感じる方がいらっしゃることは、twitterやYahoo!ニュースのコメントなどから伝わってきました。その理由は、「民間放送(民放)地上波で取り上げる時間が短い」という点に尽きると思います。ニュースなどでは扱われていたはずですが、その時間はおそらくオリンピックよりも短く、また競技中継もされなかったはずです。なぜなら、ピョンチャン・パラリンピックの放映権を獲得していたのはNHKのみだからです。オリンピックでは、ジャパン・コンソーシアム(JC)というNHKと民放が合同で放映権を取る仕組みがありますが、パラリンピックでJCが組まれた例はなく、今回もNHK単独となったわけです。ですから、ときどき目にする「NHKが独占するから民放が放送できない」という指摘は誤りで、「民放が放映権獲得に乗り出さなかったためNHK単独になっている」というのが実情なのです。

 

冒頭の話に戻ると、「とても魅力的で、お金を出してでも放送したい」と民放各社に思ってもらえるようなパラリンピックにすること。これが、今後の大きな課題といえます。おそらく2020年東京大会では、それもかなりクリアになるのではないかと期待しています。

 

期待といえば、個人的に勝手に期待して勝手に残念に思ったことがあります。1998年長野大会でアルペンの大日方邦子とバイアスロンの小林(井口)深雪さんが金メダルを獲得したとき、翌朝の日刊スポーツの一面全面を飾りました。あれから20年の時を経て、パラアスリートの話題が一面を埋め尽くす日がまた訪れたのではないかと心躍ったのが、アルペンの村岡桃佳選手とクロスカントリーの新田佳浩選手という二人の金メダリストが誕生した翌日(15日)のことです。

 

ところが、検索した画面を見せてもらうと、一面を飾っていたのはプロ野球オープン戦の話題! ああ、がっかり! わざわざ調べてくれたメディア仲間のO君に、「日本から野球がなくなってしまえばいいのに!」と思わず悪態をついてしまいました(ちなみにO君は元球児です)。別に野球は嫌いではありませんし、むしろ好きなほうなのですが、新聞の野球偏重ぶりにはときどき腹が立ちます。今の時期ぐらい、まだ開幕していないプロ野球より、パラリンピックに限らずウインタースポーツをもっと取り上げてくれてもいいのではないでしょうか。

 

「人気がある競技に報道が偏るのは仕方ない」という意見もあるかと思いますが、ここでまた冒頭の鶏と卵の話にループします。報道されることによって注目や人気が高まることは、先のオリンピックにおけるカーリングなどを見ても明らかです。メディアの端くれとしての自分もいるので、立ち位置が少々ぐらぐらしますが、ここでパラ関係者の一人としてお伝えしたいのは、「我々ももっと努力するので、ぜひ関心を持って報じてください」という願いです。

 

以上、長くて読みにくい文章になったかもしれませんが、ご容赦ください。

堀切 功(ほりきり・いさお)

 

1965年生まれ。雑誌編集の経験を活かして、写真撮影や出版編集を仕事にしています。

 

詳しくは[プロフィール]をご参照ください。

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