北欧の旅【9月15日/ストックホルム】

中央駅から市庁舎へ

 

ストックホルム滞在2日目の朝、ふらりふらりと市庁舎方面に向かってみます。その道すがら中央駅に立ち寄り、明日に乗る空港行きの列車などを確認。

こういう空間は、やっぱり絵になりますね。

 

駅の外側では一部工事が行なわれていて、銅像までヘルメットをかぶせられていました。こういう茶目っ気は好きです。

そして市庁舎へ。途中の自転車道が気持ちよさそうでした。

橋を渡った先に市庁舎がありました。内部を見るにはガイドツアーを利用しなければならないとのことなので、今回はパス。他の皆さんがそうしているように、しばし周辺でくつろぐことにしました。

庁舎の外壁のツタが、9月だというのに紅葉し始めていました。

 

バスに乗って

 

市庁舎近辺からバス移動。エステルマルム地区まで足を伸ばします。

今回の旅でつくづく思ったのですが、公共施設や交通機関のバリアフリー対策のキモになるのは、実はベビーカーなのではないでしょうか。車いすだけでは絶対数が少ない上、良くも悪くも特別視されることが多く、なかなか身近な問題として受け止めてもらえません。そこにベビーカーが加われば、より多くの人を巻き込んだ街づくりが可能になるはずです。

 

コペンハーゲンもヘルシンキもそうでしたが、とりわけストックホルムではベビーカーをたくさん見かけた気がします。そして、車いすユーザーも。ともに“車輪もの”という共通点があり、街に出ればきわめて近い存在となります。そんなことを、ここストックホルムであらためて実感しました。

 

さらにいうと、どのベビーカーもでかいんです。

上の写真のベビーカーは、実は二人乗り。かなりの大きさですが、とくに珍しいわけではありません。似たようなサイズのものが、わりとゴロゴロしています。小さくたためるタイプはごく少数でした。

 

東京も、以前に比べればベビーカーは増えていると思います。外国製の大きなものも、よく見かけるようになりました。でも、なんだか取扱いが大変そうに見えることが少なくありません。人が多いし、あちこちに段差もあるし、出入り口が狭かったりもするためでしょうか。

 

周囲の人々の「邪魔だな」という視線も気になるのかもしれません。電車の中などで、申し訳なさそうにしている親御さんもいます。単純に、置くスペースがないんですよね。車いす用に、一部の座席を取り払った車両もありますが、あの手法をもっと大胆に推し進めていいのではないかと思います。

 

ベビーカーが邪魔にされない街なら、車いすユーザーもきっと快適に出歩けることでしょう。

 

そして、ここストックホルムでは、歩道にも配慮が見られました。他の都市と同じく石畳が多く使われていますが、全面に敷き詰めるのではなく、一部をフラットにしてあるのです。

石畳の凹凸に痛めつけられてきた車いすユーザーには、実にありがたい道です。ベビーカーに乗る赤ちゃんも喜んでいるのでは?

 

さて、トラム(路面電車)にも乗ってみましょう。この停留所では、車掌さんがスロープを出してくれました。

今回の旅では、バスやトラムに車いすユーザーが乗ろうとしても、わりと放っておかれることが多かったのですが、ここは車体と停留所との隙間がそれなりに広く開いていたので助かりました。

 

トラムは橋を渡り、ユールゴーデン島に向かいます。スウェーデンを代表する存在ということで「アバ博物館」の宣伝が目立っていましたが、あえてスルー。近くにある「ヴァーサ号博物館」へと入ってみました。

 

ヴァーサ号は17世紀に建造された戦艦で、完成して間もなく海底に沈むという不幸な歴史を背負っています。低温の海中という環境によって腐食を免れた船体は、沈没から333年後の1961年に引き上げられたそうです。

写真ではスケール感が伝わりにくいのですが、船首から船尾までが69mもある巨大な船です。しかも、驚くべき保存状態の良さ。まさに中世のタイムカプセルです。

 

引き上げにまつわるエピソードも、「プロジェクトX」で取り上げたいほどドラマチック。たいした予備知識もなしに、ふらりと入った博物館ですが、これを見逃さずに済んで本当に良かったと思います。

ヴァーサ号の船体には、手の込んだ彫刻が随所に施されています。しかも完成当時は、これが極彩色に塗られていたというから驚きです。戦艦としては無駄な装飾のように思えますが、当時はそういう華やかさも必要とされていたのでしょうね。

 

船内に残されていた調度品や生活道具なども見ることができます。それらの展示がすばらしく、結局、閉館まで居座ってしまいました。ストックホルム観光をするなら、ここは一番のオススメです!

 

この日のディナー

 

夕食をとるお店は、街を歩きながら探しました。なかなか決まらずにいたところ、ここを発見。

“Frippe”というレストランです。ここで食べたトナカイのローストが絶品でした。

鹿肉と牛肉を合わせたような印象で、旨みもたっぷり。物価が高いため値段もそこそこしましたが、この味なら納得できます。

 

満腹になったところで、腹ごなしに歩いてホテルに帰ります。まだそれほど遅い時間ではなく、人々が歩いているわけですが、街の暗さが気になります。

おそらく東京が、どこもかしこも明るすぎるのだと思います。本来、夜は暗いもので、きっとこれぐらいで充分なのです。

 

ホテル前にはタクシーが客待ちをしていました。フォルクスワーゲンのトゥーランですかね。

北欧を旅していて気づいたのは、タクシーの車種がさまざまだということです。セダンだけでなく、ミニバンもワゴンも当たり前に走っています。

 

また自国への不満になってしまいますが、なぜ日本のタクシーはセダンばかりなのでしょう? こうしたミニバンやワゴンのほうが、荷物もたくさん積めるし快適なのではないでしょうか。

 

日本のタクシーに車いすを積むときは、車輪を外す必要があります。そうしないと、トランクのゲートが閉まりません。アクティブなユーザーは、ワンタッチで車輪を外せるモデルを使っていますが、現状はそれが多数派とはいえないようで、十中八九、「あ、外せるんですか!」とドライバーに驚かれます。車輪を外せない車いすは、おそらくゲートを完全には閉めず、そのままでは開いてしまうのをヒモ等で抑えて走っているのでしょう。危ないし、見た目も最悪です。

 

そんな変な苦労をするぐらいなら、ワゴンにすればいいのに、といつも思うのです。車いすの車輪を外す必要がなくなるし、ゲートもきちんと閉まるでしょう。スーツケースやゴルフバッグもたっぷり積めます。もちろんベビーカーだって。

 

そういえば、ニューヨークの新しいイエローキャブに日産のミニバンが採用されたというニュースがありました。

 

米NYのイエローキャブに日産車が採用された理由とは(東洋経済オンライン)

 

これと同じことが、なぜ日本でできないのでしょう。おそらく、さまざまな事情が背景にあるのだと思います。日本のタクシーはLPG燃料で走る専用車が主流だし、都心では立体駐車場で保管している会社もあるのかもしれません。でも結果的に、利用者が不便を強いられているのが現状だと思うのです。

 

どこか大手のタクシー会社が、自前の車種を一斉に切り替えてくれないものかと、ひそかに願っています。それができたら男前なのに……。2020年の東京オリンピック・パラリンピックも、ちょうど良い契機ですよ!

堀切 功(ほりきり・いさお)

 

1965年生まれ。雑誌編集の経験を活かして、写真撮影や出版編集を仕事にしています。

 

詳しくは[プロフィール]をご参照ください。

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