「別れ」 モンド闘病記【7/2】

モンドがいなくなって、もうじき3週間。いわゆる「ペットロス」というものを、思い切り味わわされている。ものすごい喪失感だ。

 

よその犬を見ると、何とも言えない気持ちになる。かわいいのだが、つらい。犬の声はもちろん、少しでも似た音(何かがこすれるようなキュッという音や、子供の嬌声など)が聞こえるたびにドキッとして、周囲を見回してしまったりもする。また、近所の道を歩いていると、モンドとの散歩が思い起こされて、猛烈に悲しくなるときがある。

 

それでも、闘病記を締めくくらなければという気持ちが、ようやく出てきた。モンドとの別れの日のことを書こうと思う。

 7月2日。朝起きると、モンドの様子が明らかに前日とは違っていた。庭に出しても、ほんの少ししか歩こうとせず、ゴハンもほとんど食べない。調子が悪いときのモンドはこんな感じになりがちだが、すぐに元気を取り戻していたこれまでとは何かが違う。これは放っておけないと直感し、ずっとそばに寄り添うようにした。

 

やがてクニコが用事で出かけ、ほどなくして義母も買物に出ることになった。そのとき、私の横で寝ていたモンドが、「行ってきます」の声に反応して突然、立ち上がったのだ。ちょっと弱々しい動きだったが、彼が自分の仕事だと決めている「お見送り」をしようと必死になっていることは、痛いほどよくわかった。

 

私とモンドは二人きりの時間を過ごすことになった。膝の上に抱いてみたり、添い寝をしてみたり、モンドがゆったりとくつろげて、そしてできれば少しでも元気になってくれるような体勢と場所を探しながら、家の中をあちこち移動した。そして落ち着いたのが、庭の見える窓辺だった。私は椅子を窓側に向けて座り、抱きかかえたモンドを撫でていた。

 

穏やかな時間だった。しかし、この頃からモンドの呼吸はいつもよりも荒くなり始めていた。なんとなく不安を感じた私は、クニコに電話をかけ、できれば早めに帰ってきたほうがいいと告げた。

 

その電話を切った数分後、モンドが四肢を突っ張らせた。呼吸はますます荒くなり、やがて首を右後ろに思い切りひねって、素人目にも危険とわかる状態に陥った。このときに咄嗟に玄関に移動したのは、もしかしたら粗相をしてしまうのではないかという予感がしたからだろうと思う。

 

どれくらいの時間、腕に抱えながら撫でていただろう。瞬間的に、荒かった呼吸が静かになり、突っ張っていた体から力が抜けた。

 

目は開いている。でも心臓の音はしない。モンドはあっけないくらい突然、逝ってしまった。

 

直後に、義母が帰ってきた。「ダメでした」と伝えるのが精一杯だった。クニコも帰ってきた。3人で泣いた。

 

きっとモンドは、大好きだった軽井沢を自分の最後の場所に選んだのだろう。退院してから順調に回復したように見えたのも、ここに来たい一心で頑張っていたのだろう。そして、緑に囲まれた庭で遊び、リンゴもサツマイモも食べて、満足したのだろう。

 

そばに皆がいると悲しませるから、静かに逝きたかったのだろう。でも一人きりだとさびしいから、私だけを残したのだろう。抱かれながらの最期も、きっと望みどおりのものだったのだろう。

 

思えば、甘ったれのくせに、妙に自立したところのある犬だった。そんなモンドらしい最期だったのかもしれない。

堀切 功(ほりきり・いさお)

 

1965年生まれ。雑誌編集の経験を活かして、写真撮影や出版編集を仕事にしています。

 

詳しくは[プロフィール]をご参照ください。

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